【第2回東方最萌 1回戦 霧雨 魔理沙 vs ミスティア・ローレライ】
(初出:第2回東方最萌板「第2回東方最萌トーナメント 六本目」696・762)

「霊夢、お疲れ」
「お疲れ様、だぜ」
霊夢を出迎えたアリスと魔理沙。
「あー、うん、ありがとね。
 にしても、あの小悪魔があれほどやるとは思わなかったわ……。
 アリスが気を引き締めてくれなかったらどうなってたか」
「そうよ?感謝しなさいよね。
 このトーナメント、ひと波乱起こそうとしてるのはいくらでもいるわ。
 1戦1戦、下手な油断なんてできない、ってこと。
 ……で?その辺分かってるの?そこのあんたは」
「……ほへ?私かえ?
 相手が誰であれ、私がやることは一つだ。
 必殺の魔砲で吹き飛ばす、それだけだぜ」
「……やれやれ、あんたの心配した私が間違いだったわ」
呆れたような表情を浮かべるアリス。つられて霊夢も苦笑する。

「で、魔理沙、行かなくていいの?もう時間じゃない?」
「は?何を言ってるんだ、霊夢。
 次の試合はフランとあのちっこいので、私の対戦は次の次だろ?」
魔理沙の思いもよらない言葉に、アリスと霊夢の表情も流石に凍りつく。
「……魔理沙、あんた、本気で言ってるの?
 特別日程でそのカードは後に回ってるの、だから次はあんたの試合!
 ほら、よく見なさい!」
トーナメント日程を手渡すアリス。目を通した魔理沙の顔が、みるみる青ざめていく。
「……げっ、本当だ!うわわ、不戦敗なんて洒落にもならん!
 すまん、アリス、霊夢、行ってくるぜ!!それじゃ!!」
ばたばたと慌しくステージへの通路を駆けていく魔理沙。
「……やれやれ、さっきまであれだけ落ち着いてたのは何だったのやら」
「全くだわ。まぁ、あいつなら心配ないとは思うけど。
 ……ねぇ、霊夢」
「ん?」
「……おめでとう」
「……ありがと」
「でも……負けないからね」
「こちらこそ」










「うぅぅ……どうしようかしら」
通路のベンチに腰を下ろすミスティア。その表情は冴えない。
「初めての大会で、よりにもよって相手があの魔法使いだなんて……。
 勝てるわけないじゃないのよー……はぁ……」
脳裏に浮かぶはあの秋の夜。あの夜のことは、自分から勝負を吹っかけたこと、
相手が2人がかりだったことを考慮してもなお、ミスティアにとって悪夢であった。
嫌なことを思い出し一層表情は沈む。と、
「ちょっと、そこのあんた!」
いきなり声をかけられて、驚きつつも顔を上げた。
そこにいたのは水色の髪の氷精。
「……あんたは確か、大会参加者の」
「チルノよ。あんたの次の試合に出るわ」
「そう。で、何か用なの?悪いけど今ちょっと試合前で気が立ってるんだけど」
「それよ!」
「は?」
「試合前だってのにあんた、全っ然気合入ってないみたいじゃない!
 そんな元気のない表情されると、こっちにまでうつっちゃうのよ!何とかしなさい!」
「そ、そんなこと言われたって仕方ないでしょ!?
 あの白黒になんて、勝てるわけ……!」
「何言ってんの!?勝てるとか勝てないとか、そんなことはどうでもいいの!
 やる前から諦めてどうすんのよ!?」
「な……あんたに何が分かるってのよ!?」
「分かるわよ!……私だって……相手はあの吸血鬼だもん」
はっとするミスティア。チルノもまた、実力的には段違いの相手と戦おうとしているのだ。
「そりゃ怖いのは分かるわよ……普通に考えればかないっこない相手だもん。
 でもね、私はおとなしく負けてやるつもりなんて、全っ然ないんだから!
 のこのこ出てってあっさり負けてはいおしまい、なんてつまんないでしょ!?」
「……チルノ……」
「いい!?別に負けたって殺されるわけじゃないんだから!
 当たって砕けて一泡でも吹かせられれば儲けもの、ってくらいで行ってきなさい!」
「当たって砕けて一泡でも……か。
 ……ふふ、そうよね、そのくらいの気持ちなら気も楽だわ」
ミスティアはすっくと立ち上がり、眼前のチルノの頭をわしゃわしゃ、っと撫でた。
「ありがと、チルノ。あんたには今度、とびっきりの歌を聴かせてあげるから」
「……わ、わかったんならいいのよぉ!ほ、ほら、さっさと行ってきなさいよぉ!」
顔を真っ赤にしながら照れ隠しに怒鳴るチルノ。
そんなチルノの様子に、ミスティアはくすっと笑って。
そして、ふわりと身を翻すと、ステージへの通路を歩き始めた。
「……見てなさい白黒。今日はあんたに、最高のショーを見せてあげるわ」