【第2回東方最萌 1回戦 蓬莱山 輝夜 vs 西行寺 幽々子】
(初出:第2回東方最萌板「第2回東方最萌トーナメント 10本目」47・48)

 輝夜サイド、控え室。
「姫、そろそろお時間ですよ」
「分かってるわよ、永琳」
控え室を出る輝夜と永琳。
「体の調子はいかがです?
 お望みであれば霊力を高める薬でも処方いたしますけど」
「よしてよ永琳。これは私自身の勝負なんだから。
 薬に頼るなんてフェアじゃないわ」
「勿論、冗談で言ってますわ」
「……ふぅ、んもぅ。
 そういえば、イナバたちは?」
「もう一足先に客席に陣取ってます。
 ウドンゲも、てゐも、他のイナバたちもみんな気合入ってましたよ。
 『姫を勝たせるんだー』って」
「そう。……全く、物好きよねぇ、みんな」
「あら、そういう姫も随分と楽しそうじゃありませんか」
「まあ、ね。ずっと隠れ住んでたころは退屈で仕方なかったし。
 こういう馬鹿騒ぎみたいなのも悪くないわ」
「……そうですね」
「……ねぇ、永琳」
「なんでしょう」
「たまにはあなたとも、こういう場でやってみたいものね。主従とかそういうの抜きで」
「……それをやるには私と姫が決勝まで行かないといけませんけど」
「そうね、ふふっ……でもね、結構本気よ?
 まぁ、そのためにまずはこの勝負を勝つこと、だけど」
「……応援、していますわ」
「ありがとう、永琳。
 ……それじゃ、行ってくるから」
「えぇ」

 自身初の最萌、果たしてどのような結果となるのか。
永遠の姫・蓬莱山 輝夜は、今、最萌の歴史へと、名を刻む。








 幽々子サイド、控え室。
「幽々子様、そろそろお時間です」
「そう、ありがと妖夢」
腰を上げ、ゆっくりと通路へ歩き始める幽々子。妖夢もそれに従う。
「幽々子様、どうです?勝てそう、ですか?」
「さぁねぇ。私の力も、あそこのお姫さま相手じゃ通用しないし。
 ……正直、今回は私も危ないかもしれないわねぇ」
「そ、そんなぁ、幽々子様ぁ……」
「……もう、駄目よ、妖夢」
「え?」
「このくらいの冗談は見切れないと駄目、って言ったのよ、ふふ」
「……ひょっとしてまた私をからかってました?」
「当然でしょ?危ないとかそんな弱気で戦いに挑むほど私も馬鹿じゃないわよ。
 それとも私の顔、そんなに気合入っていないように見えるかしら」
「そ、そそそそんなことは、あああありませんよ、はい」
「声が震えてる、妖夢」
「みょん……ごめんなさい」
「……妖夢」
「な、何でしょう?」
「前回、あなたと戦ったときのこと、覚えてる?」
「……えぇ、よく覚えています。1回じゃ決着つかなくて、2回戦ったんですよね」
「今回も、戦ってみたいわねぇ、また」
「ま、またですか?そんな、冗談はよしてくださいよぅ」
「いやいや妖夢。今のは結構本気の発言よ?
 2人とも勝ち続けてれば、いずれはそうなるんだから。
 そりゃ、勝ち続けられるかは分からないけど、
 それを目指すことは、悪いことじゃないわ」
「……そう、ですね。
 では、私も今日は、それが実現するよう精一杯応援しますね」
「ありがとう、妖夢。
 ……それじゃ、行ってくるわね」
「はい!」

 2度目の栄冠へ向けて。
死霊の姫・西行寺 幽々子は、今、最初の一歩を踏み出す。