【第2回東方最萌 2回戦 上白沢 慧音 vs レティ・ホワイトロック】
(初出:第2回東方最萌板「第2回東方最萌トーナメント 20本目」100)

「初めまして、かな、冬の精」
「こちらこそ初めまして、ね、ハクタクさん」
「……まぁその、今は満月じゃないから人間なんだがな、一応」
ステージの上、今日の日に向かい合うは、冬の精と、半獣。
どちらも、青系の服を身にまとい、愛用の帽子を被っている。

「そういえば、せっかくの機会なので言わせてもらうが。
 今年のご退場はいつもの時期に頼むぞ?
 去年は雪が長引いたんで里の人間も困っていたからな」
「あら、悪いけどそれは冥界のお姫様に言って頂戴よ。
 私だってあの時は出てくに出てけなくて困ってたんだから」
「何も、居座る間中雪を降らせなくてもいいだろうに。
 作物が受けた被害は結構深刻だったんだぞ?」
「仕方ないでしょう?雪を降らせることが私の仕事であり、存在意義。
 それを否定されちゃ流石に気分良くないんですけど?」
「やれやれ、何も否定まではするつもりはないんだがな。
 仕方ない、話して分からなければ弾幕(や)るまで、か」
「あら、話が早いことで。私もそろそろそうしようかと思っていたのよ。
 でも悪いけど、今、地の利はこちらにあるのよ?」
言って、レティは片腕を掲げ、ぱちん、と指を鳴らした。
次の瞬間、会場内を包み込むような強烈な吹雪が巻き起こる。
「今は月も欠けゆくとき、加えて冬は今まさに最盛。
 勝負は、流れを掴んだ者が、勝つわ」
「ふ……見くびられたものだな。
 この上白沢慧音、たとえ月の加護がなくとも、お前などに負けはしない!
 消え失せろっ!」
今度は慧音が、片手を掲げ、横に薙ぎ払う。
次の瞬間、あれほど激しかった吹雪が、嘘のように静まっていた。
「悪いが、今の吹雪、なかったことにさせてもらった。
 次は、お前自身をなかったことにしてやろうか?」
言ってニヤリと笑う慧音。
「……くっ、流石は歴史喰い、ね。けれど、そう簡単に喰われはしないわ!
 行くわよ、冬の嵐に、飲まれなさい!」
「来い、全てまとめて、喰らってやる!」