「初めまして、かな、冬の精」 「こちらこそ初めまして、ね、ハクタクさん」 「……まぁその、今は満月じゃないから人間なんだがな、一応」 ステージの上、今日の日に向かい合うは、冬の精と、半獣。 どちらも、青系の服を身にまとい、愛用の帽子を被っている。 「そういえば、せっかくの機会なので言わせてもらうが。 今年のご退場はいつもの時期に頼むぞ? 去年は雪が長引いたんで里の人間も困っていたからな」 「あら、悪いけどそれは冥界のお姫様に言って頂戴よ。 私だってあの時は出てくに出てけなくて困ってたんだから」 「何も、居座る間中雪を降らせなくてもいいだろうに。 作物が受けた被害は結構深刻だったんだぞ?」 「仕方ないでしょう?雪を降らせることが私の仕事であり、存在意義。 それを否定されちゃ流石に気分良くないんですけど?」 「やれやれ、何も否定まではするつもりはないんだがな。 仕方ない、話して分からなければ弾幕(や)るまで、か」 「あら、話が早いことで。私もそろそろそうしようかと思っていたのよ。 でも悪いけど、今、地の利はこちらにあるのよ?」 言って、レティは片腕を掲げ、ぱちん、と指を鳴らした。 次の瞬間、会場内を包み込むような強烈な吹雪が巻き起こる。 「今は月も欠けゆくとき、加えて冬は今まさに最盛。 勝負は、流れを掴んだ者が、勝つわ」 「ふ……見くびられたものだな。 この上白沢慧音、たとえ月の加護がなくとも、お前などに負けはしない! 消え失せろっ!」 今度は慧音が、片手を掲げ、横に薙ぎ払う。 次の瞬間、あれほど激しかった吹雪が、嘘のように静まっていた。 「悪いが、今の吹雪、なかったことにさせてもらった。 次は、お前自身をなかったことにしてやろうか?」 言ってニヤリと笑う慧音。 「……くっ、流石は歴史喰い、ね。けれど、そう簡単に喰われはしないわ! 行くわよ、冬の嵐に、飲まれなさい!」 「来い、全てまとめて、喰らってやる!」 |