「メルラン、頑張れー」 「メルラン姉さん、いい流れで私に繋いでね〜」 物静かな姉と、調子のいい妹に見送られて。 「さぁ、私の相手はどこかしら〜? 私のトランペットの調べにさっさと魅了されちゃいなさーい」 微妙に躁モード発動中の騒霊次女、メルラン・プリズムリバーは、 賑やかにステージに舞い降りた。 が。 「……あら?」 もうそろそろ現れてもいいはずの相手の姿が、見えない。 「えーっと?」 きょろきょろと周囲を見渡すメルラン。 と、ステージの隅っこのほうに……。 「う゛〜〜〜寒い寒い寒い〜」 会場内だというのに勝手に焚き火を焚いて暖を取る、 蟲っ娘、リグル・ナイトバグの姿。 「……ちょっとそこのあなたー、そんなところで何してるの〜? ここは試合会場よー、これから地獄絵図なのよ〜」 「? うぅー、何よ、あんた?私は参加者よ、これでも……。 はぁ、本当ならこの季節はお休みだってのにぃ……。 なんでこの寒い中、勝負なんてしないといけないのよ……」 「勝負?……ってことは、あなたが、私の相手の、リグルちゃん?」 「……え。 まさか、あんたが、メルラン・プリズムリバー?」 「そうよ、人呼んで騒霊トランペッター、 メルラン・プリズムリバーとは私のことよ〜、初めまして〜」 「ふ〜〜〜ん……ちょっと、安心したかも」 「んー?今のはどういうことかしら?」 「あ、いや……怖そうな人じゃなくてよかったなぁ、なんて……あはは」 「あらそう、ありがと。 それじゃお礼に、まずは、これからの23時間、お互いの健闘を祈って」 すちゃ、と、メルランが両手を構える。 と、次の瞬間、その両手に、愛用のトランペットが。 「さっそく1曲いくわよ〜! メルラン・プリズムリバー、行きまーす!」 高らかにトランペットを吹き鳴らすメルラン。 その直後、会場内を凄まじい怪音波と弾幕が襲った。 「ひ、ひええええぇっ!やっぱこの人怖いぃっ!!」 不意打ちのような攻撃に、大慌てで逃げ惑うリグル。 「……め、メルラン姉さん……い、いきなり、激しすぎ……」 「……き、今日はまた……一段と、ひ、酷いな……」 客席のルナサとリリカでさえも、その凄まじさに頭を抑えていた。 メルランの強烈な先制攻撃で幕を開けた戦い。 果たしてこのまま、メルランの大暴走が続くのか? それとも、リグルの季節外れの大逆襲があるのか? 最萌トーナメント2回戦、第11試合。23時間はまだ、始まったばかりで、ある。 |