【第2回東方最萌 2回戦 アリス・マーガトロイド vs 博麗 霊夢】
(初出:第2回東方最萌板「第2回東方最萌トーナメント 30本目」118)

 ステージ上。
青い服を纏った一人の少女が、目を閉じ、佇んでいる。
美しいブロンドの髪を持つその少女の側には、
使い魔と思しき1体の人形が、浮かんでいる。
人形は主の様子を悟ってか、ただ黙して主を見つめている。

 と。
ざっ、ざっ、と、足音が通路から響いてきた。
その気配を感じ、ステージ上の青い服の少女―――アリス・マーガトロイドは、
ゆっくりと目を開いた。
「来たわね―――霊夢」
やがて、暗い通路から姿を見せたのは―――、一人の、少女。
特徴的な紅白の衣装を纏い、艶やかな黒髪には、赤いリボン。
手にお払い棒とお札を握った、その少女―――博麗 霊夢は、
ゆっくりと静かに、壇上に上がった。

「待たせちゃったみたいね」
「別に気にしてないわ、こっちが早く来ただけよ。
 で、霊夢、私の忠告は、覚えてるでしょうね?」
「勿論よ、もう油断なんてこれっぽっちもないわよ。
 っていうか、あんた相手に油断なんてしてたら負けるってば」
「そう言ってもらえると、光栄だけど。
 でも、こっちも正直あんたとはやりにくいのよね。
 こう、底が見えない不気味さを感じる、とでも言うのかしら」
「褒められてんだか貶されてんだか分かんないけど……そりゃどうも」
「……でもね。
 どんな相手でも、紙一重のところで越えていくのが、私の流儀なの。
 と、いうわけで」
さっ、と手をかざすアリス。
次の瞬間、数多くの人形たちがアリスの周囲に浮かぶ。
「霊夢、あなたには悪いけどここで消えてもらうわ。
 私はまだ、終われないの。あんたの他にも倒したい奴がいるし、ね」
「やれやれ……悪いんだけど、あんたと同じでね、
 私もまだ、こんなところじゃ終われないのよ。
 前に、この大会で私と戦いたい、って言ってくれたのがいるんで、ね」
言って霊夢は目を閉じ、札を構える。
次の瞬間、その周囲を嵐のような霊力が吹き荒れる。
「……緒戦で、忠告してくれたこと、感謝してるわ、アリス。
 だから、この勝負、全力を以てその礼とするわ!」
「そうこなくちゃ、こっちも楽しくないわ!
 さぁ、舞いなさい人形たち!我が勝利のために!」
「負けるもんですか!私はまだまだ、飛び続けるわ!」



 ―――ステージ上で戦いが始まろうとしていた、その頃、観客席では……。
「霊夢……アリス……あぁくそ、私はどっちに肩入れすりゃいいんだ!?」
一人悩む、魔理沙の姿が、あったとかなかったとか。