ステージ上。 青い服を纏った一人の少女が、目を閉じ、佇んでいる。 美しいブロンドの髪を持つその少女の側には、 使い魔と思しき1体の人形が、浮かんでいる。 人形は主の様子を悟ってか、ただ黙して主を見つめている。 と。 ざっ、ざっ、と、足音が通路から響いてきた。 その気配を感じ、ステージ上の青い服の少女―――アリス・マーガトロイドは、 ゆっくりと目を開いた。 「来たわね―――霊夢」 やがて、暗い通路から姿を見せたのは―――、一人の、少女。 特徴的な紅白の衣装を纏い、艶やかな黒髪には、赤いリボン。 手にお払い棒とお札を握った、その少女―――博麗 霊夢は、 ゆっくりと静かに、壇上に上がった。 「待たせちゃったみたいね」 「別に気にしてないわ、こっちが早く来ただけよ。 で、霊夢、私の忠告は、覚えてるでしょうね?」 「勿論よ、もう油断なんてこれっぽっちもないわよ。 っていうか、あんた相手に油断なんてしてたら負けるってば」 「そう言ってもらえると、光栄だけど。 でも、こっちも正直あんたとはやりにくいのよね。 こう、底が見えない不気味さを感じる、とでも言うのかしら」 「褒められてんだか貶されてんだか分かんないけど……そりゃどうも」 「……でもね。 どんな相手でも、紙一重のところで越えていくのが、私の流儀なの。 と、いうわけで」 さっ、と手をかざすアリス。 次の瞬間、数多くの人形たちがアリスの周囲に浮かぶ。 「霊夢、あなたには悪いけどここで消えてもらうわ。 私はまだ、終われないの。あんたの他にも倒したい奴がいるし、ね」 「やれやれ……悪いんだけど、あんたと同じでね、 私もまだ、こんなところじゃ終われないのよ。 前に、この大会で私と戦いたい、って言ってくれたのがいるんで、ね」 言って霊夢は目を閉じ、札を構える。 次の瞬間、その周囲を嵐のような霊力が吹き荒れる。 「……緒戦で、忠告してくれたこと、感謝してるわ、アリス。 だから、この勝負、全力を以てその礼とするわ!」 「そうこなくちゃ、こっちも楽しくないわ! さぁ、舞いなさい人形たち!我が勝利のために!」 「負けるもんですか!私はまだまだ、飛び続けるわ!」 ―――ステージ上で戦いが始まろうとしていた、その頃、観客席では……。 「霊夢……アリス……あぁくそ、私はどっちに肩入れすりゃいいんだ!?」 一人悩む、魔理沙の姿が、あったとかなかったとか。 |