【第2回東方最萌 3回戦 上白沢 慧音 vs 橙】
(初出:第2回東方最萌板「第2回東方最萌トーナメント 39本目」123)

「藍さまも、紫さまも、凄かった……。
 よーしっ、私も、負けてられないっ!」
自分の主とその主の壮絶なバトルを目の当たりにし、橙は燃えていた。
自分も、この試合、勝って。少しでも、藍さまや、紫さまに、近づくんだ。
そんなことを、思いながら―――橙はステージに飛び出した。
その前に、待ち受けていたのは。
「現れたな。待っていたぞ、凶兆の黒猫」
威厳に満ちた表情を浮かべた歴史の守護者―――上白沢 慧音。
今宵は満月ではないので人間の姿ではあるが、それでも圧倒的な威圧感。
その威圧感の前に、橙の闘志の炎、早くも、風前の灯。
「にゃ、にゃう〜〜〜……」(うるっ)
一瞬にして涙目になってしまう橙。この試合、早くもピンチ。
……が。
今回に関しては、これが、幸いした。
(はっ……こ、この猫、ちょ、ちょっと、か、可愛い、かも……)
その怯えの表情が、なんと幸運にも慧音のツボにクリーンヒット。
「……す、すまない、怖がらせてしまったようだな」
慧音の表情が少しずつ柔和なものに変わる。
「ほ……ほ〜ら、怖くないから、な?」
ぎこちなくも笑顔を浮かべて、橙をなだめにかかる慧音。
「う〜〜〜……ほんとに?ほんとに怖くない?」
涙目のまま、首を傾げて上目遣いに問う橙。
(く……くぁぁぁぁっ!その目は反則だぁぁぁっ!!!)
慧音の理性、もはや決壊寸前。
「怖くない、怖くない……ほら、これでどうだ?」
言いながらどさくさに紛れて橙を優しく抱きしめる慧音。
「あ……うん、怖く、ない……ありがとう、お姉さん」
(お、お姉さん……っ!? あぁもう、我慢、できんっ!)
ぎゅむ〜〜〜〜〜っ。
「にゃ、にゃう〜、ちょ、ちょっと、痛いです〜……」
思わず力一杯抱きしめてしまう、慧音であった。
なお、どこかの兎と違い、橙の一連の行動に裏は一切なかったことを、
橙の名誉のために付け加えておく。

 一方、観客席では。
「藍、落ち着きなさい!今から試合なのよ!」
「離してください、紫様!
 えぇい、あのハクタクめ、どさくさに紛れて私の橙になんてことをっ!
 天誅食らわしてやらないと気がすまんっ!」
勝負を終えて元の主従関係に戻ったばかりの紫と藍が、もみ合っていた。

 最萌トーナメント3回戦、第3試合。
この対戦、果たしてどうなりますことやら……。