【第2回東方最萌 準々決勝 紅 美鈴 vs リリーホワイト】
(初出:第2回東方最萌板「第2回東方最萌トーナメント 52本目」843)

 最萌トーナメント準々決勝も、いよいよ第3戦。
会場の熱気は未だ治まる気配なく、このまま決勝まで突っ走らんばかりの勢いである。
そして今、今宵の対戦者が、同時にステージへと歩を進めてきた。
かたや、燃えるように紅い帽子とチャイナドレスに身を包んだ、門番。
かたや、暖かみのある白の帽子とワンピースに身を包んだ、春の妖精。
紅美鈴と、リリーホワイト。
2人が今、ステージで、対峙した。

「ここのところ、少しだけ暖かくなってきた気がするけど……あなたのおかげ?」
「私に出来るのは、春を伝えることだけですから。呼ぶことはできないですよ。
 けど、春が近づいているのは、確かですね。
 もうすぐ、本格的に春になると思いますよ」
そう言ってにっこりと微笑むリリーホワイト。
「そう、それは朗報ね。少し楽になるわ……」
「?」
「ほら、私って、門番でしょ。
 仕事場は外だから、夏と冬はツライのよ、色々と……、
 でも、あなたがそう言うなら、苦難の日々ももう終わりね。
 いいわよねぇ、春は……門番してても気持ちがよくって、
 ついついウトウトしちゃうのよね、これg(ざくっ)はうぅっ!」
調子に乗って職務怠慢を自白した瞬間、美鈴の頭にいつのまにか突き刺さるナイフ。
たとえ自分の戦いのときでなくとも、紅魔館のメイド長に、隙はない。
「……あ、あの〜、大丈夫ですか〜?」
冷や汗をかきつつ恐る恐る尋ねるリリー。
「……だ、大丈夫、慣れてる、から……」
「は、はぁ、そうなんですか……」
「咲夜さんが……容赦ないのは、いつものこt(ざくざくっ)はうぅぅっ!」
さらに容赦なく襲うナイフ。美鈴、戦う前からもうボロボロ。
まったくもって哀れだが、ある意味自業自得でもある。
「……(ばたっ)」
倒れたまま、沈黙してしまった美鈴。
「め、美鈴さ〜ん? 生きてますか〜?」
反応がないのでとりあえずつんつん、とつついてみるリリー。
と。
突然、すっく、と美鈴が立ち上がった。だらだらと血を流しながら。
「きゃっ!め、美鈴さん、血が……」
「だ、大丈夫よ、このくらい……よ、っと」
ナイフを抜き、傷口に手をかざす美鈴。
と、手から仄かな光が漏れ、傷口がしだいに塞がっていく。
「……ふぅ。
 見ての通り、私は気功で多少の怪我は治せちゃうから、さ。
 だから、心配ないわよ、本当に」
そう言ってにこっと笑う美鈴。
「は、はぁ、そう、ですか……良かった、です……。
 (あれって、多少の怪我、って次元じゃなかったような……)」
また冷や汗をかきつつ、とりあえず笑っておくリリーであった。



「さて、今のでとりあえず気合も入ったし。
 始めましょうか、そろそろ」
「は、はい!
 今日1日、宜しくお願いします!」
「うん、いい返事!
 それじゃ、楽しみましょう!」

 なんだかんだあったものの、準々決勝・第3戦、今、開幕。