最萌トーナメント準々決勝も、いよいよ第3戦。 会場の熱気は未だ治まる気配なく、このまま決勝まで突っ走らんばかりの勢いである。 そして今、今宵の対戦者が、同時にステージへと歩を進めてきた。 かたや、燃えるように紅い帽子とチャイナドレスに身を包んだ、門番。 かたや、暖かみのある白の帽子とワンピースに身を包んだ、春の妖精。 紅美鈴と、リリーホワイト。 2人が今、ステージで、対峙した。 「ここのところ、少しだけ暖かくなってきた気がするけど……あなたのおかげ?」 「私に出来るのは、春を伝えることだけですから。呼ぶことはできないですよ。 けど、春が近づいているのは、確かですね。 もうすぐ、本格的に春になると思いますよ」 そう言ってにっこりと微笑むリリーホワイト。 「そう、それは朗報ね。少し楽になるわ……」 「?」 「ほら、私って、門番でしょ。 仕事場は外だから、夏と冬はツライのよ、色々と……、 でも、あなたがそう言うなら、苦難の日々ももう終わりね。 いいわよねぇ、春は……門番してても気持ちがよくって、 ついついウトウトしちゃうのよね、これg(ざくっ)はうぅっ!」 調子に乗って職務怠慢を自白した瞬間、美鈴の頭にいつのまにか突き刺さるナイフ。 たとえ自分の戦いのときでなくとも、紅魔館のメイド長に、隙はない。 「……あ、あの〜、大丈夫ですか〜?」 冷や汗をかきつつ恐る恐る尋ねるリリー。 「……だ、大丈夫、慣れてる、から……」 「は、はぁ、そうなんですか……」 「咲夜さんが……容赦ないのは、いつものこt(ざくざくっ)はうぅぅっ!」 さらに容赦なく襲うナイフ。美鈴、戦う前からもうボロボロ。 まったくもって哀れだが、ある意味自業自得でもある。 「……(ばたっ)」 倒れたまま、沈黙してしまった美鈴。 「め、美鈴さ〜ん? 生きてますか〜?」 反応がないのでとりあえずつんつん、とつついてみるリリー。 と。 突然、すっく、と美鈴が立ち上がった。だらだらと血を流しながら。 「きゃっ!め、美鈴さん、血が……」 「だ、大丈夫よ、このくらい……よ、っと」 ナイフを抜き、傷口に手をかざす美鈴。 と、手から仄かな光が漏れ、傷口がしだいに塞がっていく。 「……ふぅ。 見ての通り、私は気功で多少の怪我は治せちゃうから、さ。 だから、心配ないわよ、本当に」 そう言ってにこっと笑う美鈴。 「は、はぁ、そう、ですか……良かった、です……。 (あれって、多少の怪我、って次元じゃなかったような……)」 また冷や汗をかきつつ、とりあえず笑っておくリリーであった。 「さて、今のでとりあえず気合も入ったし。 始めましょうか、そろそろ」 「は、はい! 今日1日、宜しくお願いします!」 「うん、いい返事! それじゃ、楽しみましょう!」 なんだかんだあったものの、準々決勝・第3戦、今、開幕。 |