「残るは、私たちを含め――4名。 いよいよここまで、来たわね」 ステージ上、眼前のメイド――十六夜咲夜に対し、 境界の妖怪・八雲紫は、不敵に言った。 「……そうね」 「あなたも私も、前回はあっけなかったものねぇ。 それを考えると、今回はお互い、よくやったものよね」 「えぇ、確かに。 ……けどね、私はまだまだ満足していないわよ」 咲夜がそう言うと同時に、その手もとに1本のナイフが現れる。 「私の目標は、紅魔館に優勝をもたらすこと。 いまや、単純に考えても、その可能性は75%。 それを100%にするためには、八雲紫――あなたの存在が、邪魔なのよ。 決勝に進むのは、この、私」 すっ、と目を細め、紫に向けてナイフを突きつける咲夜。 それを意にも介さず、紫は応じる。 「ふふふっ、世の中、そう上手くいくことばかりじゃないわよ? 決勝の椅子、独占なんて、させませんわ。私がいただきます。 安心なさいな、決勝の相手にどちらが来ようと、私が倒してさしあげますから」 「強気なものね。けれど」 咲夜がそう言うと、同時に。 二人の間を、幾十本ものナイフが、埋め尽くした。その切先を、紫に向けて。 「ここまで来て負けるなんて、勿体無いことは、出来ないわね。 さっき言った目標だけどね、本当はひとつ主語が抜けているのよ。 紅魔館に『私が』優勝をもたらすこと、それが最高の目標、よ」 言って、にやりと笑う、咲夜。 その目は――紅に、染まっていた。 しかし。 「ふふ、いい目だこと。だけどね――」 すっ、と片手を薙ぐ紫。 次の瞬間、中空に浮かんでいたナイフが、全て、消え去った。 「この八雲紫を、甘く見てもらっては、困りますわ。 私は全ての境界を操れる……勝利と敗北の境界すら、ね」 言いながら、続けて手を下に振る。 と――そこから大量のナイフが、地面に零れ落ちた。 が、その次の瞬間、そのナイフは、全て咲夜の手元へと戻っていた。 そう、今の一連の行動さえ、二人にとっては――デモンストレーション。 「ふん、一筋縄では勝たせない、ってわけね。 それなら私も、操ってみせる。この先の、時間の流れ!」 言って、咲夜は地を蹴り、飛び上がった。 「さあ、遊びは終わり。どちらが上を行くか……弾幕でケリをつけましょう!」 応じて、紫もふわっと宙へ浮き上がった。 「勿論よ、それが幻想郷のルール……すべては、弾幕が、決めますわ!」 栄冠まで、あと2つ。舞台は――最終章へ向け、走り始めた。 |