【第2回東方最萌 準決勝 八雲 紫 vs 十六夜 咲夜】
(初出:第2回東方最萌板「第2回東方最萌トーナメント 57本目」431)

「残るは、私たちを含め――4名。
 いよいよここまで、来たわね」
ステージ上、眼前のメイド――十六夜咲夜に対し、
境界の妖怪・八雲紫は、不敵に言った。
「……そうね」
「あなたも私も、前回はあっけなかったものねぇ。
 それを考えると、今回はお互い、よくやったものよね」
「えぇ、確かに。
 ……けどね、私はまだまだ満足していないわよ」
咲夜がそう言うと同時に、その手もとに1本のナイフが現れる。
「私の目標は、紅魔館に優勝をもたらすこと。
 いまや、単純に考えても、その可能性は75%。
 それを100%にするためには、八雲紫――あなたの存在が、邪魔なのよ。
 決勝に進むのは、この、私」
すっ、と目を細め、紫に向けてナイフを突きつける咲夜。
それを意にも介さず、紫は応じる。
「ふふふっ、世の中、そう上手くいくことばかりじゃないわよ?
 決勝の椅子、独占なんて、させませんわ。私がいただきます。
 安心なさいな、決勝の相手にどちらが来ようと、私が倒してさしあげますから」
「強気なものね。けれど」
咲夜がそう言うと、同時に。
二人の間を、幾十本ものナイフが、埋め尽くした。その切先を、紫に向けて。
「ここまで来て負けるなんて、勿体無いことは、出来ないわね。
 さっき言った目標だけどね、本当はひとつ主語が抜けているのよ。
 紅魔館に『私が』優勝をもたらすこと、それが最高の目標、よ」
言って、にやりと笑う、咲夜。
その目は――紅に、染まっていた。

 しかし。
「ふふ、いい目だこと。だけどね――」
すっ、と片手を薙ぐ紫。
次の瞬間、中空に浮かんでいたナイフが、全て、消え去った。
「この八雲紫を、甘く見てもらっては、困りますわ。
 私は全ての境界を操れる……勝利と敗北の境界すら、ね」
言いながら、続けて手を下に振る。
と――そこから大量のナイフが、地面に零れ落ちた。
が、その次の瞬間、そのナイフは、全て咲夜の手元へと戻っていた。
そう、今の一連の行動さえ、二人にとっては――デモンストレーション。
「ふん、一筋縄では勝たせない、ってわけね。
 それなら私も、操ってみせる。この先の、時間の流れ!」
言って、咲夜は地を蹴り、飛び上がった。
「さあ、遊びは終わり。どちらが上を行くか……弾幕でケリをつけましょう!」
応じて、紫もふわっと宙へ浮き上がった。
「勿論よ、それが幻想郷のルール……すべては、弾幕が、決めますわ!」

 栄冠まで、あと2つ。舞台は――最終章へ向け、走り始めた。