【第2回東方最萌 準決勝 紅 美鈴 vs フランドール・スカーレット】
(初出:第2回東方最萌板「第2回東方最萌トーナメント 60本目」44)

「ご機嫌うるわしゅうございます、妹様」
「ごきげんよ〜♪ 美鈴も、元気そうだねー」
「はい。門番は、体調管理が大事ですからね」
「そっかぁ。いつも、お仕事、ご苦労さま」
「あ、いえ、そんな……お嬢様と、館のみんなの、ためですから」

 最萌トーナメント準決勝・第2戦は、紅魔館対決。
門番・紅美鈴と、館主の妹・フランドールの対決。
お互い見知った相手ということで、ステージ上はどこかまったりとした空気。

「今日の勝負、私、楽しみにしてたんだっ。
 だって、美鈴ったら、いつも遊んでって言っても逃げてばっかりで」
「し、仕方ないじゃないですかぁ。私には門番の仕事もありますし、
 それに私じゃとうてい妹様のお相手は務まらないですよ〜」
「……嘘」
「え?」
「美鈴、嘘ついてる。だって、それがもし本当だったら、
 こんなところまで来れてないよ。もう、準決勝なんだよ?」
「……」
「やりもしないのに、勝てないなんて決め付けちゃダメ!
 1回やってみなきゃ分かんないでしょ!? 全力、出してみなさいよっ!!」
「……ありがとうございます、妹様。
 確かに、やってみなければ分からないかもしれませんね」
美鈴が、口を開いた。
「! じゃあ……!」
……が、すぐに美鈴は力のない笑みを浮かべて、言った。
「でも、私は従者の身です。仕えるべき御方を相手に、全力なんて出せませんよ」
「そ、そんなぁ、美鈴……」
と、ここで。
美鈴の笑みの様子が、変わった。顔に、力が、戻った。
「……普段なら、ですけどね」
「え?」
「けど、ここは――このステージの上は、れっきとした、勝負の場です。
 ここでは目上も目下もない――たとえ妹様が相手でも、手加減など、できません。
 よって今日は、この紅美鈴、全力で、お相手させていただきます!」
そう叫んで――美鈴は、構えを、取った。
驚きの表情を浮かべたまま、固まるフランドール。が、
「……そ」
次の瞬間、ぱぁっと、その表情が明るくなる。
「そうこなくっちゃ! そうよ、ここで手かげんなんてしたら、許さないんだからねっ!
 いくよっ、美鈴! あなたの全力、私に見せて!」
そう叫んで――フランドールは、地を駆けた。


 ――そのころ、観客席にて。
「咲夜」
「? なんです、お嬢様?」
「この勝負、どっちが勝つと思うかしら? 咲夜は」
「……それはまた、難しい質問ですねぇ。
 美鈴も、妹様も、内に秘めた力は凄まじいものがあります。
 勝負の間にそれを出し切れるかどうか、だと思いますけど」
「そうね……くくっ、でも、どっちが勝つにしても、
 決勝は咲夜にとって厳しい戦いになりそうねぇ」
「ええ……ですが、どちらが来ても、決勝、負けるつもりは、ありませんわ」
咲夜がそう答えると、満足そうにレミリアは笑みを浮かべた。
「そう、それでいいわ、咲夜。決勝でも、楽しませてちょうだい、私を。
 今回は、余計な手出しはなし。運命が如何なる流れを形作るか、見せてもらうよ。
 さぁ、誰が紅魔館に賜杯をもたらすか……今日と、3日後。楽しめそうだね」

 咲夜と、紅魔館の、そして大会の覇を競うのは、果たしてどちらか――。
準決勝第2戦、開戦のとき、来たり。