「ご機嫌うるわしゅうございます、妹様」 「ごきげんよ〜♪ 美鈴も、元気そうだねー」 「はい。門番は、体調管理が大事ですからね」 「そっかぁ。いつも、お仕事、ご苦労さま」 「あ、いえ、そんな……お嬢様と、館のみんなの、ためですから」 最萌トーナメント準決勝・第2戦は、紅魔館対決。 門番・紅美鈴と、館主の妹・フランドールの対決。 お互い見知った相手ということで、ステージ上はどこかまったりとした空気。 「今日の勝負、私、楽しみにしてたんだっ。 だって、美鈴ったら、いつも遊んでって言っても逃げてばっかりで」 「し、仕方ないじゃないですかぁ。私には門番の仕事もありますし、 それに私じゃとうてい妹様のお相手は務まらないですよ〜」 「……嘘」 「え?」 「美鈴、嘘ついてる。だって、それがもし本当だったら、 こんなところまで来れてないよ。もう、準決勝なんだよ?」 「……」 「やりもしないのに、勝てないなんて決め付けちゃダメ! 1回やってみなきゃ分かんないでしょ!? 全力、出してみなさいよっ!!」 「……ありがとうございます、妹様。 確かに、やってみなければ分からないかもしれませんね」 美鈴が、口を開いた。 「! じゃあ……!」 ……が、すぐに美鈴は力のない笑みを浮かべて、言った。 「でも、私は従者の身です。仕えるべき御方を相手に、全力なんて出せませんよ」 「そ、そんなぁ、美鈴……」 と、ここで。 美鈴の笑みの様子が、変わった。顔に、力が、戻った。 「……普段なら、ですけどね」 「え?」 「けど、ここは――このステージの上は、れっきとした、勝負の場です。 ここでは目上も目下もない――たとえ妹様が相手でも、手加減など、できません。 よって今日は、この紅美鈴、全力で、お相手させていただきます!」 そう叫んで――美鈴は、構えを、取った。 驚きの表情を浮かべたまま、固まるフランドール。が、 「……そ」 次の瞬間、ぱぁっと、その表情が明るくなる。 「そうこなくっちゃ! そうよ、ここで手かげんなんてしたら、許さないんだからねっ! いくよっ、美鈴! あなたの全力、私に見せて!」 そう叫んで――フランドールは、地を駆けた。 ――そのころ、観客席にて。 「咲夜」 「? なんです、お嬢様?」 「この勝負、どっちが勝つと思うかしら? 咲夜は」 「……それはまた、難しい質問ですねぇ。 美鈴も、妹様も、内に秘めた力は凄まじいものがあります。 勝負の間にそれを出し切れるかどうか、だと思いますけど」 「そうね……くくっ、でも、どっちが勝つにしても、 決勝は咲夜にとって厳しい戦いになりそうねぇ」 「ええ……ですが、どちらが来ても、決勝、負けるつもりは、ありませんわ」 咲夜がそう答えると、満足そうにレミリアは笑みを浮かべた。 「そう、それでいいわ、咲夜。決勝でも、楽しませてちょうだい、私を。 今回は、余計な手出しはなし。運命が如何なる流れを形作るか、見せてもらうよ。 さぁ、誰が紅魔館に賜杯をもたらすか……今日と、3日後。楽しめそうだね」 咲夜と、紅魔館の、そして大会の覇を競うのは、果たしてどちらか――。 準決勝第2戦、開戦のとき、来たり。 |