【第2回東方最萌 決勝戦 十六夜 咲夜 vs 紅 美鈴 後編】
(初出:第2回東方最萌板「第2回東方最萌トーナメント 65本目」337・749)

「運命夜 〜 Scarlet Dream...」

「はっ!」
「せいっ!」
激戦、23時間。両者、最後のナイフと気弾を、放った。
直後、最後の力を振り絞り、回避行動。
「「くぅっ!」」
ナイフは――美鈴の頬を、微かに傷付けただけ。
気弾は――咲夜のメイド服の裾を、裂いただけ。
最後の一撃も、決定打には至らず。
そして、次の瞬間。
「それまでっ! 試合終了、これより判定に入ります!」
終戦を告げるアナウンスが、響いた。

 ステージの、上。客席から惜しみない拍手が送られる中、
「はぁーっ、疲れたぁ……」
力尽きたようにがっくりと肩を落とす美鈴と、
「全くね……厳しい一戦だったわ」
ふぅっ、と息をつきながら額の汗を拭う咲夜。
「でも……いい試合、出来たでしょうか、私たち」
「あれだけやって、こうして2人とも立ってる時点で。
 いい試合だったに、決まってるでしょ? 自信を持ちなさい」
「そうよ」
咲夜の後ろから聞こえてきた、声。
2人が見やった、その方向には――2人の主、レミリア・スカーレット。
「咲夜、美鈴、お疲れ様。いい試合、見せてもらったわ。
 私も、自分の試合なみに血が騒いだわ。大満足よ」
そう言って笑う主の姿に、
「「ありがとうございます、お嬢様」」
2人の声が、綺麗に重なって。
それに気付いた咲夜と美鈴は気恥ずかしそうに笑い、
レミリアは愉快そうにふふっ、と笑った。

「判定結果が出ました!」
会場内に響くアナウンス。
「出たんですね、結果」
「そうみたいね。ま、どっちが勝ったって恨みっこなしで、ね」
「勿論です」
笑いあう、咲夜と美鈴。
会場を一時の沈黙が覆う中、
「発表します。 勝者――」
読み上げられた、結果は――――。










「――紅美鈴!」
その瞬間、場内を歓声と拍手、紙吹雪が覆い尽くした。
「え……私が、勝ったん……ですか……?」
喜ぶより先に、信じられないといった感じで呆然とする美鈴。
そんな美鈴に、
「そうよ。私の負けね……見事だったわ、美鈴。おめでとう」
そう言ってすっきりした表情で手を差し出す咲夜。
「は……はいっ! ありがとう、ございましたっ!」
目には涙を浮かべながら、美鈴はその手を握り返した。
その瞬間、一層、会場の歓声と拍手が、強くなった。
しばしの間、会場内は、暖かな空気に、包まれた。


 と、そこへ。
「おめでとう、美鈴」
「……お嬢様……ありがとうございます。この優勝、お嬢様に捧げます」
「ふふ、有難いけど、それは遠慮しておくわ。
 他ならぬあなた自身の手で掴んだ、栄冠だもの。私は関係ない。
 それと……咲夜、惜しかったわね、あなたも」
「はい。ですが、美鈴の力が一歩、私を上回った、それだけです。
 私は、満足していますよ」
「そう……なら、いいのよ。
 でも、これだけは言えるわ。2人とも、紅魔館の、私の、誇りよ」
そう言って、レミリアは誇らしげに微笑んだ。

「さあ、2人とも、勝負の時間はここまで。ここからは後夜祭の時間よ。
 今までの勝負でも振り返りながら、会場の皆でじっくり飲み明かしましょう」
「「はい、お嬢様!!」」
また、2人の声が、重なって。
2人とレミリアは、また、笑った。


 ――違った意味で騒がしかった日々も、今日で終わり。


 ――明日からはまた、騒がしい日常が、戻ってくる。


 ――だから、せめて、この夜くらいは、


 ――去り行く祭りを、皆で騒いで見送ろう。




 第2回・東方最萌トーナメント――――ここに、閉幕。

 おつかれさま、でした。