【第2回東方最萌 2回戦 魂魄 妖夢 vs マエリベリー・ハーン】
(初出:第2回東方最萌板「第2回東方最萌トーナメント 26本目」554・556)

「……そろそろ、時間ですね」
ここは、魂魄妖夢の控え室。
出撃のときを待つ妖夢の側には、幽々子の姿もある。
「妖夢、いけそう?」
「ええ、体調は万全です。23時間、戦い抜いて見せますよ」
「……私の試合のとき、私の言ったこと、覚えてるわよね」
「……勿論です。
 また幽々子様と同じ舞台に立つことを目標に、
 まずこの一戦、がむしゃらに、何が何でも勝ちに行きます」
「うふふ、いい気合ね、妖夢。
 ……でも」

 びにょ〜ん。
次の瞬間、幽々子の両の手によって、妖夢の白い頬が横に引っ張られた。
「にゃ、にゃにふるんでふか〜〜〜っ!」
突然のことにびっくりしつつ、
引っ張られて真っ赤になった頬をさすって、涙目になる妖夢。
「気合の入り過ぎは駄目。妖夢の悪いクセよ?
 いい加減、もうちょっと気を楽に持つことも覚えなさいな」
そう言ってにっこりと微笑む幽々子。
その笑みに少し気恥ずかしくなって、また頬が赤くなる妖夢。
「気楽に、ですか……」
「そうそう、リラックスリラックス。
 肩の力を抜いて、深呼吸よ〜」
言われるまま、目を閉じて肩をほぐし、息を深く吸い込んで、吐き出す。
「……」
「どう?大丈夫?」
「……少し、体が軽くなったような気がします。ありがとうございます、幽々子さま」
言って微笑む妖夢と。
「それは何より」
それにまた微笑で応じる幽々子。

「さて、それじゃ、行ってきますね」
「応援、してるからね」
「はい!」
元気良く控え室から駆けていく妖夢。
その後ろ姿を見送りながら、
「妖夢、あなたなら大丈夫……しっかりね」
幽々子は、そう一人ごちた。










「あーーーーっ、疲れたぁ……」
通路に戻ってくるなり、蓮子はぐったりと近くの椅子にへたりこんでしまった。
「蓮子、大丈夫?」
「あー、まぁ、なんとか……でも、さすがにきつかった、かな。
 はは、やっぱ、いきなりで勝とうってのは虫が良すぎたなぁ……」
「でも凄かったよ蓮子、ぶっつけであれだけ戦えたら十分だって」
「……お褒めの言葉、ありがと。
 はー、でも、疲れたし、負けちゃったけど……物凄く楽しかった。
 貴重な体験ができた、って感じ。
 ……だから、さ、メリー」
「?」
「メリーも、これからの勝負、楽しんできなよ。思う存分。
 こんな経験、滅多に出来るもんじゃない……っていうか、
 きっともう出来ないだろうから、さ」
「……うん、わかった。
 勝ち負けは別にして、まずは貴重な体験を楽しんでくることにするわ。
 じゃ、蓮子、私、そろそろ行くわね」
「あぁ……行ってらっしゃい」
互いに軽く手を振り合ってから、メリーはステージへ向けて駆けていった。

 一人、通路に残された、蓮子。
「……紫さん、いるんでしょ?」
そう呟くと。
「あら、よく分かりましたわね」
にゅう、っと横の空間が開いて、紫が顔を覗かせた。
「……なんとなく、そんな気がしただけですよ。
 これ、お返しします。ありがとうございました」
そう言って蓮子は、昨日渡された白紙のスペルカードを差し出した。
「えぇ、お疲れ様。
 にしても、勝負を見たけど、あなた、いいセンスしてたわよ。
 場数を重ねていけば、もっともっと強くなれると思うけど」
カードを受け取ってスキマにしまい込みながら、紫は言った。
「そんな、よしてくださいよ紫さん、たまたまです。
 ……大丈夫でしょうかね、メリーは」
「さあ……相手の子を私はよく知ってるけど、かなりの腕よ?
 ぶっつけ本番だし、厳しい勝負になるとは思うけど、
 まぁ、少なくとも死にはしないわよ。これは遊びなんだし」
「……そうでした。遊び、なんですよね、これは。
 ……すいません、少し、眠くなってきました。ちょっとだけ、眠らせてもらいます」
「分かったわ。今は、ゆっくりと、おやすみなさい、旅人さん」
そう言って紫は、スキマの中へと姿を消した。
「……頑張れ、メリー……」
通路からステージのほうを見やり、それだけ呟いて。
蓮子は帽子を目深に被り直し、束の間の休息へと意識を落とした。