【第2回東方最萌 準々決勝 鈴仙・優曇華院・イナバ vs 八雲 紫】
(初出:第2回東方最萌板「第2回東方最萌トーナメント 48本目」872)

「開戦時間まで後少し……まだあの隙間妖怪は現れていない、か」
鈴仙はステージの上でひとりごちた。
その後ろ、観客席の一角では、輝夜・永琳・てゐと仲間の兎たちが総出で
一足早く鈴仙の応援を開始している。
「なんか、物凄く期待されちゃってるし、なぁ。
 いっそ、このまま不戦勝、なーんてことになってくれると楽でいいんだけど」
「それは残念、流石にそうは行きませんわ」
「ありゃ、やっぱり……ってうわぁぁぁぁぁっ!!!???」
いきなり真横から聞こえてきた声にずざざざざっ、っと飛びずさる鈴仙。
神出鬼没の隙間妖怪・八雲紫、唐突の登場である。
「い、いきなり現れないでよ……心臓止まるかと思ったわ」
「あら、むしろ止まってくれることを期待していたのですけど」
「ちょっと待てこら」
「大丈夫よ、もしそうなったら幽々子に面倒見てもらうつもりだったし」
「いやそれフォローになってないんだけど」
苦笑する鈴仙と、不敵に笑う紫。

「……ふん、まぁいいや。不戦勝なんてなくても、勝負に勝てばいいだけ。
 私はね、師匠すら乗り越えて、ここまできたの。
 こんなところで負けては、姫や師匠、てゐに申し訳が立たない」
きっ、と紫を睨みつける鈴仙。
「あらあら。でも、私も、かわいい式たちの分まで、
 全てを背負ってここに立っているのよね」
そう言って後ろを指差す紫。
そこには主の戦いをじっと見守る藍と、
「紫さま~~~、がんばってくださ~~~い!!」
と声を張り上げる橙の姿。
「あの子たちの為にも。こんなところで、八雲の名は、消せませんわ」
「お互い、最後の砦同士、ってわけね……。
 いいわ、なら、互いの誇りを賭けて、この一戦、熱くやりましょう」
「……もとより、そのつもりですわ」
「話が早いわね、それじゃ……」

「この月の狂気、耐えられるものなら耐えてみなさい、隙間妖怪!」
「この弾幕の隙間、あなたの目には見切れるかしらね、狂気の兎!」

 永遠亭と、八雲家。
互いの生き残りを賭けた壮絶な一戦が、今、幕を開けた。