「開戦時間まで後少し……まだあの隙間妖怪は現れていない、か」 鈴仙はステージの上でひとりごちた。 その後ろ、観客席の一角では、輝夜・永琳・てゐと仲間の兎たちが総出で 一足早く鈴仙の応援を開始している。 「なんか、物凄く期待されちゃってるし、なぁ。 いっそ、このまま不戦勝、なーんてことになってくれると楽でいいんだけど」 「それは残念、流石にそうは行きませんわ」 「ありゃ、やっぱり……ってうわぁぁぁぁぁっ!!!???」 いきなり真横から聞こえてきた声にずざざざざっ、っと飛びずさる鈴仙。 神出鬼没の隙間妖怪・八雲紫、唐突の登場である。 「い、いきなり現れないでよ……心臓止まるかと思ったわ」 「あら、むしろ止まってくれることを期待していたのですけど」 「ちょっと待てこら」 「大丈夫よ、もしそうなったら幽々子に面倒見てもらうつもりだったし」 「いやそれフォローになってないんだけど」 苦笑する鈴仙と、不敵に笑う紫。 「……ふん、まぁいいや。不戦勝なんてなくても、勝負に勝てばいいだけ。 私はね、師匠すら乗り越えて、ここまできたの。 こんなところで負けては、姫や師匠、てゐに申し訳が立たない」 きっ、と紫を睨みつける鈴仙。 「あらあら。でも、私も、かわいい式たちの分まで、 全てを背負ってここに立っているのよね」 そう言って後ろを指差す紫。 そこには主の戦いをじっと見守る藍と、 「紫さま~~~、がんばってくださ~~~い!!」 と声を張り上げる橙の姿。 「あの子たちの為にも。こんなところで、八雲の名は、消せませんわ」 「お互い、最後の砦同士、ってわけね……。 いいわ、なら、互いの誇りを賭けて、この一戦、熱くやりましょう」 「……もとより、そのつもりですわ」 「話が早いわね、それじゃ……」 「この月の狂気、耐えられるものなら耐えてみなさい、隙間妖怪!」 「この弾幕の隙間、あなたの目には見切れるかしらね、狂気の兎!」 永遠亭と、八雲家。 互いの生き残りを賭けた壮絶な一戦が、今、幕を開けた。 |