「運命夜 〜 Scarlet Dream...」
|
「はっ!」 「せいっ!」 激戦、23時間。両者、最後のナイフと気弾を、放った。 直後、最後の力を振り絞り、回避行動。 「「くぅっ!」」 ナイフは――美鈴の頬を、微かに傷付けただけ。 気弾は――咲夜のメイド服の裾を、裂いただけ。 最後の一撃も、決定打には至らず。 そして、次の瞬間。 「それまでっ! 試合終了、これより判定に入ります!」 終戦を告げるアナウンスが、響いた。 ステージの、上。客席から惜しみない拍手が送られる中、 「はぁーっ、疲れたぁ……」 力尽きたようにがっくりと肩を落とす美鈴と、 「全くね……厳しい一戦だったわ」 ふぅっ、と息をつきながら額の汗を拭う咲夜。 「でも……いい試合、出来たでしょうか、私たち」 「あれだけやって、こうして2人とも立ってる時点で。 いい試合だったに、決まってるでしょ? 自信を持ちなさい」 「そうよ」 咲夜の後ろから聞こえてきた、声。 2人が見やった、その方向には――2人の主、レミリア・スカーレット。 「咲夜、美鈴、お疲れ様。いい試合、見せてもらったわ。 私も、自分の試合なみに血が騒いだわ。大満足よ」 そう言って笑う主の姿に、 「「ありがとうございます、お嬢様」」 2人の声が、綺麗に重なって。 それに気付いた咲夜と美鈴は気恥ずかしそうに笑い、 レミリアは愉快そうにふふっ、と笑った。 「判定結果が出ました!」 会場内に響くアナウンス。 「出たんですね、結果」 「そうみたいね。ま、どっちが勝ったって恨みっこなしで、ね」 「勿論です」 笑いあう、咲夜と美鈴。 会場を一時の沈黙が覆う中、 「発表します。 勝者――」 読み上げられた、結果は――――。 「――紅美鈴!」 その瞬間、場内を歓声と拍手、紙吹雪が覆い尽くした。 「え……私が、勝ったん……ですか……?」 喜ぶより先に、信じられないといった感じで呆然とする美鈴。 そんな美鈴に、 「そうよ。私の負けね……見事だったわ、美鈴。おめでとう」 そう言ってすっきりした表情で手を差し出す咲夜。 「は……はいっ! ありがとう、ございましたっ!」 目には涙を浮かべながら、美鈴はその手を握り返した。 その瞬間、一層、会場の歓声と拍手が、強くなった。 しばしの間、会場内は、暖かな空気に、包まれた。 と、そこへ。 「おめでとう、美鈴」 「……お嬢様……ありがとうございます。この優勝、お嬢様に捧げます」 「ふふ、有難いけど、それは遠慮しておくわ。 他ならぬあなた自身の手で掴んだ、栄冠だもの。私は関係ない。 それと……咲夜、惜しかったわね、あなたも」 「はい。ですが、美鈴の力が一歩、私を上回った、それだけです。 私は、満足していますよ」 「そう……なら、いいのよ。 でも、これだけは言えるわ。2人とも、紅魔館の、私の、誇りよ」 そう言って、レミリアは誇らしげに微笑んだ。 「さあ、2人とも、勝負の時間はここまで。ここからは後夜祭の時間よ。 今までの勝負でも振り返りながら、会場の皆でじっくり飲み明かしましょう」 「「はい、お嬢様!!」」 また、2人の声が、重なって。 2人とレミリアは、また、笑った。 ――違った意味で騒がしかった日々も、今日で終わり。 ――明日からはまた、騒がしい日常が、戻ってくる。 ――だから、せめて、この夜くらいは、 ――去り行く祭りを、皆で騒いで見送ろう。 第2回・東方最萌トーナメント――――ここに、閉幕。 おつかれさま、でした。 |