「はぁ……はぁ……」 「ぜぇ……はぁ……」 両者、死力を尽くしての、激闘。 「次で、決めにするか……フラン」 「そう、だね……これで、最後」 言ってレーヴァテインを構え直すフランドール。 「なら……受け取れ!これが私の、最後の全力だ! ブレイジング・スター!」 手にした箒に跨り、最後の必殺スペルを発動する。 星屑を撒き散らしながら、フランドールに突撃する魔理沙。 「たぁぁぁぁっ!」 向かってくる魔理沙めがけ、フランドールもレーヴァテインを振り下ろす。 ―――それは、一瞬の、交錯。 その、次の、瞬間。 フランドールの横を通過した魔理沙が、一気に失速。 そのまま、ステージへと落下した。 「……見事だぜ、フラン……私の、負けだ」 ステージに大の字に倒れ込んだまま、それだけ言って―――魔理沙は気を失った。 「そこまで!勝者、フランドール・スカーレット!」 会場に、勝者を告げるアナウンスが響き渡った。 それから、数刻後。 どうにか意識を取り戻した魔理沙は、控え室へと続く通路を歩いていた。 と。 「……魔理沙」 「ん、アリス、か……。 ……はっ、無様だよな……昨日あれだけ盛大にお前に啖呵切っておいて、 蓋を開けてみりゃこのザマだ。次どころか、目の前すら越えられなかった」 自嘲気味に魔理沙は吐き捨てる。 「……」 「……なんだよ、言いたいことがあるならさっさと言え。 笑いたいか?なら笑うがいいさ、私は負けた、それだけが事実だ」 「……いい勝負、見せてもらったわ。お疲れ様」 「……へっ、なんでぇ、安っぽい慰めなんて、ごめんだぜ……。 だが……ここはありがたく受け取っておくと、するぜ」 「これ、あげるわ。一足先に去りゆくあんたに、せめてもの餞別、よ」 そう言ってアリスが差し出したのは1本の瓶。 「……こりゃ、酒―――水道水、か」 「どうせあんたのことだから、これから自棄酒でしょう?」 「ふん、よく分かってるな。そのつもりだったぜ、確かに。 まぁこの際だ、くれるもんは貰っておくぜ……ありがとな、アリス」 最後の部分は呟くように言って、魔理沙は再び控え室への道を歩き出す。 「じゃ、私は戻るぜ。お前はこの先、頑張れよ―――厳しい戦いになるだろうが、な」 「……承知の上よ。都会派魔法使いがあんたの思ってるほどヤワじゃないってこと、 この先の戦いで証明してあげるわ」 「せいぜい楽しみにしてるぜ……じゃ、な」 それだけ言って、帽子を目深に被り直し、魔理沙は通路の奥へと消えた。 帽子の下の、顔は―――。 それを知ってか、知らずか、アリスは呟いた。 「全く、変なところで素直じゃないんだから―――私も、ね」 通路を歩きながら、魔理沙は思った。 昨日の、負けたというのに妙に淡々としていた霊夢の行動。 あの意味が、少しだけ今の自分には、分かる。 決して、悔しさがないわけでは、なかったのだ。 ただ、悔しさに負けないだけの充実感と、ほんのちょっとの強がりが。 人前で弱さを見せさせなかった、そういうこと、なのだろう。 「……へっ……一人になった途端に……泣けてきやがった、ぜ……」 足を止め、しばし魔理沙は一人、涙を流した。 控え室の前まで、やってきた。 「魔理沙、お疲れ様」 「……霊夢か。あぁ、疲れたぜ」 笑う魔理沙。もうその目に涙は、ない。人前で、涙は、見せない。 少しだけ赤くなった目で察されたかもしれないが、 まぁ、そのくらいは、こいつにならいいだろう。 「……終わっちゃったわね、お互い」 「そうだな。まぁ、ここからはまた、見て応援して楽しむとしようぜ。 それより……」 そこまで言って、魔理沙は水道水の瓶を取り出した。 「ちょっと上がってけよ。どうせ、時間、有るんだろ? 飲もうぜ。2人だけの、お疲れ様会だ」 ―――霧雨 魔理沙、 ―――――2回戦にて、最萌の舞台から退場す。 |