【第2回東方最萌 3回戦 鈴仙・優曇華院・イナバ vs 八意 永琳】
(初出:第2回東方最萌板「第2回東方最萌トーナメント 36本目」710)

「くっ!」
後ろに大きくジャンプする鈴仙。
その直後、さっきまで鈴仙がいた場所を妖弾が直撃し、土煙を上げる。
「あはは、どうしたのウドンゲ、それが精一杯?」

 ついに3回戦に突入した最萌トーナメント。
ステージの上では、鈴仙と永琳の師弟対決が繰り広げられている。
だが、やはり師たる永琳に分があるか、
鈴仙は防戦一方の戦いを強いられていた。
「……くそっ!」
狂気を込めた瞳で師を睨み付ける鈴仙。
だが。
「無駄よ。あなたもよく分かってるでしょう、ウドンゲ?
 私は月の民、月の狂気には慣れている。あなたの力は、通じない」
永琳は平然と、次々に攻撃を放ってくる。
(……やっぱり、駄目か……! 何か、何か反撃の手立ては……)
紙一重で攻撃をかわしながら、鈴仙は考える。
だが、そう簡単に起死回生の手段が思い付くわけもない。

 やがて、永琳は手を止め、一つため息をついて、言った。
「残念だわ、ウドンゲ。その程度とはね。
 これ以上続けるまでもない、今ここで楽にしてあげるわ」
言うと同時に、数多くの使い魔が永琳の後ろから飛び出し、展開される。
「これで、終わり、よ」
(この使い魔の数……!!
 これだけから撃たれたら、さすがに避けきれない……ここまで、なの?
 …………使い魔……?)
その瞬間、鈴仙の頭の中に一つの考えがよぎった。
(!! もしか、したら! うまくいくか分からないけど、これしかない!)
ざっ。
鈴仙は足を止め、永琳の方を向く。
「……覚悟を、決めたの?
 まぁいいわ、それなら、1回で、決めてあげる」
(まだだ、まだ……まだ……)
「さぁ……撃て!」
(今だっ!!)
鈴仙は、いちかばちかの狂気の瞳を発動した。

 次の瞬間。使い魔たちの一斉射撃が、放たれた。
目の前の鈴仙に―――ではなく、主・永琳に向けて。
「なっ!?」
驚愕の表情を浮かべ、慌てて防御姿勢を取る永琳。
そこへ次々と弾幕が着弾し、土煙を上げる。
「よし、思った通り!」
鈴仙はぐっ、と拳を握った。
やがて、土煙が晴れ、永琳の姿が再び現れる。
立っている……とはいえ、服はところどころ破れ、頬にも一筋の血の跡。
「……恐れ入ったわ、ウドンゲ。そう来るとはね」
「確かに、師匠には私の操る狂気は利かない。
 けれど、力の劣る使い魔なら、狂わせられるかも……そう思ったんですよ」
「私の使い魔とて、決して月の狂気に弱いわけではないのだけれど……。
 驚いたわ、まさかあなたの狂気がそこまで強力だったとは、ね」
言いながら使い魔を消滅させる永琳。
「ウドンゲ……あなたはやはり、よく出来た弟子よ。師として、嬉しいわ」
「……光栄です」
「けれど……まだまだ勝負はこれから!
 さあ、続けるわよ!私を越えられるものなら、越えてみなさい!」
「……はい、越えて、みせます!必ず!」