「くっ!」 後ろに大きくジャンプする鈴仙。 その直後、さっきまで鈴仙がいた場所を妖弾が直撃し、土煙を上げる。 「あはは、どうしたのウドンゲ、それが精一杯?」 ついに3回戦に突入した最萌トーナメント。 ステージの上では、鈴仙と永琳の師弟対決が繰り広げられている。 だが、やはり師たる永琳に分があるか、 鈴仙は防戦一方の戦いを強いられていた。 「……くそっ!」 狂気を込めた瞳で師を睨み付ける鈴仙。 だが。 「無駄よ。あなたもよく分かってるでしょう、ウドンゲ? 私は月の民、月の狂気には慣れている。あなたの力は、通じない」 永琳は平然と、次々に攻撃を放ってくる。 (……やっぱり、駄目か……! 何か、何か反撃の手立ては……) 紙一重で攻撃をかわしながら、鈴仙は考える。 だが、そう簡単に起死回生の手段が思い付くわけもない。 やがて、永琳は手を止め、一つため息をついて、言った。 「残念だわ、ウドンゲ。その程度とはね。 これ以上続けるまでもない、今ここで楽にしてあげるわ」 言うと同時に、数多くの使い魔が永琳の後ろから飛び出し、展開される。 「これで、終わり、よ」 (この使い魔の数……!! これだけから撃たれたら、さすがに避けきれない……ここまで、なの? …………使い魔……?) その瞬間、鈴仙の頭の中に一つの考えがよぎった。 (!! もしか、したら! うまくいくか分からないけど、これしかない!) ざっ。 鈴仙は足を止め、永琳の方を向く。 「……覚悟を、決めたの? まぁいいわ、それなら、1回で、決めてあげる」 (まだだ、まだ……まだ……) 「さぁ……撃て!」 (今だっ!!) 鈴仙は、いちかばちかの狂気の瞳を発動した。 次の瞬間。使い魔たちの一斉射撃が、放たれた。 目の前の鈴仙に―――ではなく、主・永琳に向けて。 「なっ!?」 驚愕の表情を浮かべ、慌てて防御姿勢を取る永琳。 そこへ次々と弾幕が着弾し、土煙を上げる。 「よし、思った通り!」 鈴仙はぐっ、と拳を握った。 やがて、土煙が晴れ、永琳の姿が再び現れる。 立っている……とはいえ、服はところどころ破れ、頬にも一筋の血の跡。 「……恐れ入ったわ、ウドンゲ。そう来るとはね」 「確かに、師匠には私の操る狂気は利かない。 けれど、力の劣る使い魔なら、狂わせられるかも……そう思ったんですよ」 「私の使い魔とて、決して月の狂気に弱いわけではないのだけれど……。 驚いたわ、まさかあなたの狂気がそこまで強力だったとは、ね」 言いながら使い魔を消滅させる永琳。 「ウドンゲ……あなたはやはり、よく出来た弟子よ。師として、嬉しいわ」 「……光栄です」 「けれど……まだまだ勝負はこれから! さあ、続けるわよ!私を越えられるものなら、越えてみなさい!」 「……はい、越えて、みせます!必ず!」 |