【第2回東方最萌 3回戦 八雲 藍 vs 八雲 紫】
(初出:第2回東方最萌板「第2回東方最萌トーナメント 37本目」810)

「藍、覚えているかしら?」
「何を、です?紫様」
「ずーっと、昔……私たちが出会ったときの事」
「……えぇ、覚えていますとも。
 はぐれ天狐だった私は、紫様、あなたと出会い、戦い、
 そして―――敗れ、あなたに忠誠を誓った」
「そう。あの時あなたはこう誓った。
 『一生、八雲紫に式として従い、尽くす』……と、ね」
「……懐かしい、話です」
「それで、なんだけどね、藍」
「? 何でしょう?」
「主として、命じるわ、藍。
 これから23時間、勝負が終わるまで、その誓いはなかったものとし、
 私の式でなかった頃のあなたに戻り、私と全力で勝負すること」
「!! 紫様!?」
「当たり前でしょう?そうでもしないと、あなたは絶対手心を加える。
 せっかくの勝負の機会で、そういうことはして欲しくないの」
「しかし……!!」
「もう、融通が利かないわねぇ。なら……実力行使ね」
そう言ってスキマに手を突っ込む紫。次の瞬間。
「……ちょっ、やっ!? 紫様、何を!?っひゃあ!?」
なにやら、藍の様子がおかしい。
「……よっ、と。はい、取れましたー」
やがて、紫がスキマから札を取り出した。どうやら藍に憑けていた式のようだ。
……どこに貼られていたのかは紫と藍だけの秘密である。
「うぅ、紫様ぁ……」
久々に式が取れて、どことなく心細そうな藍。
「勝負が終わるまでこれは没収よ。
 これで、あなたを式として縛るものはなくなった。
 もうあとは藍、あなたの心持ち次第……さぁ、どうする?」
「…………」
「藍」
「……わかり、ました」
決意したように顔を上げてそう言い、藍は頭の帽子を脱ぎ捨てた。
「紫様……いや、八雲紫。
 この藍、これから23時間、八雲の姓を捨て、
 今一度、はぐれ天狐として、あなたと全力で戦うことを……誓う!行くぞ!」
「そう、それでいいわ、藍!
 さぁ、来なさい!どれだけ力をつけたか、見せてもらうわ!」