「あんたが、今日の相手?」 目の前の、白い服の少女に対し、リグル・ナイトバグは問いかける。 「はい、リリーホワイトです。宜しくお願いします、リグルさん」 ぺこり、と頭を下げる春の精、リリーホワイト。 「春の精、かぁ。 あいにくと春はまだ私の活動期間じゃないけど、 ま、寒くなくなってくるのはいいよね」 「リグルさんは、蛍、でしたっけ。 私、蛍って見るの初めてです」 「え?そうなの?」 「はい。私、春以外はずっとお休みしてますから」 「ふーん……。 よし、それじゃ特別、私がいい物を見せてあげるよ」 「? いい物、ですか?」 「気に入ってもらえると、いいけど……それっ」 リグルが、かざした手をひゅうっと横に振る。 その直後、その手の先から―――幾本もの光の筋が解き放たれた。 「わぁ……綺麗ですね……」 「まだシーズンオフだけど、特別の大サービス。 蛍たちの舞い、少しの時間だけど楽しんでよ」 会場の薄闇の中を飛び回る蛍たちの、光の演舞。 リリーは、いつもは決して見られない光景に、目を輝かせて見とれていた。 リグルもそんなリリーを見て、満足そうに、嬉しそうに、笑った。 季節外れの春の蛍が、しばし、会場全体を魅了した。 やがて。 リグルが再び手をかざすと、そこに蛍たちが収束し、消えていく。 「……どうだった?初めて見た、蛍の舞いは」 「……凄いです、感動しました。ありがとうございます、リグルさん。 ……シーズンのときに見られないのが、ちょっと残念ですけどね」 「たまには、春以外にもちょっとくらい外に出てみたら? ……まぁ、この時期いっつも引き篭もってる私が言えた義理じゃないけどね」 「そう、ですね。たまには、それもいいかもしれないです」 リリーホワイトは、にっこりと微笑んだ。 「さて、このまままったりしててもしょうがないし……そろそろ始めよっか?」 「そうですね。もう時間みたいですし」 「……手加減は、なしね?」 軽く笑ってリグルが言う。 「お互い様です」 リリーも笑って言い返す。 「それじゃ……お互い、良い試合を!」 「はい!」 それを合図に、2人は―――空へと、舞った。 |