【第2回東方最萌 3回戦 リグル・ナイトバグ vs リリーホワイト】
(初出:第2回東方最萌板「第2回東方最萌トーナメント 43本目」786)

「あんたが、今日の相手?」
目の前の、白い服の少女に対し、リグル・ナイトバグは問いかける。
「はい、リリーホワイトです。宜しくお願いします、リグルさん」
ぺこり、と頭を下げる春の精、リリーホワイト。
「春の精、かぁ。
 あいにくと春はまだ私の活動期間じゃないけど、
 ま、寒くなくなってくるのはいいよね」
「リグルさんは、蛍、でしたっけ。
 私、蛍って見るの初めてです」
「え?そうなの?」
「はい。私、春以外はずっとお休みしてますから」
「ふーん……。
 よし、それじゃ特別、私がいい物を見せてあげるよ」
「? いい物、ですか?」
「気に入ってもらえると、いいけど……それっ」
リグルが、かざした手をひゅうっと横に振る。
その直後、その手の先から―――幾本もの光の筋が解き放たれた。
「わぁ……綺麗ですね……」
「まだシーズンオフだけど、特別の大サービス。
 蛍たちの舞い、少しの時間だけど楽しんでよ」
会場の薄闇の中を飛び回る蛍たちの、光の演舞。
リリーは、いつもは決して見られない光景に、目を輝かせて見とれていた。
リグルもそんなリリーを見て、満足そうに、嬉しそうに、笑った。
季節外れの春の蛍が、しばし、会場全体を魅了した。

 やがて。
リグルが再び手をかざすと、そこに蛍たちが収束し、消えていく。
「……どうだった?初めて見た、蛍の舞いは」
「……凄いです、感動しました。ありがとうございます、リグルさん。
 ……シーズンのときに見られないのが、ちょっと残念ですけどね」
「たまには、春以外にもちょっとくらい外に出てみたら?
 ……まぁ、この時期いっつも引き篭もってる私が言えた義理じゃないけどね」
「そう、ですね。たまには、それもいいかもしれないです」
リリーホワイトは、にっこりと微笑んだ。

「さて、このまままったりしててもしょうがないし……そろそろ始めよっか?」
「そうですね。もう時間みたいですし」
「……手加減は、なしね?」
軽く笑ってリグルが言う。
「お互い様です」
リリーも笑って言い返す。
「それじゃ……お互い、良い試合を!」
「はい!」
それを合図に、2人は―――空へと、舞った。