(定時SS集)
ざざっ。 2つの着地音が重なり、そしてステージの上に静寂が訪れる。 両者とも、まだまだ、気合は、十分。 「へぇ……腕を上げたわね、美鈴」 「日々、鍛錬は欠かしていませんからね。 そういう咲夜さんこそ、相変わらずキレがいいですね」 「メイド長ってのは機敏さが重要なのよ。 それこそ、門番に負けないくらいに、ね」 そこまで言って、お互いの顔に愉快そうな笑みが浮かぶ。 「さあ、まだ勝負は終わってないわ。 次は、こっちから行くわよ」 言って咲夜はカードを1枚取り出し、静かに、宣言した。 「幻符――『殺人ドール』」 次の瞬間、大量のナイフが中空を覆い尽くし、 さらにその直後、美鈴めがけて迫っていく。 しかし。 「ならば、私も! 虹符、『彩虹の風鈴』!」 美鈴もすかさず、スペルを発動。 放たれた七色の気弾が、渦を巻き、ナイフの群れへと、襲い掛かった――! 紅魔の鋭き牙と、紅魔の硬き盾。 その激突は――12時間を経て、今、後半戦へと、突入する。 ――決勝戦、残り、11時間……! 「……くっ!」 かたや、気弾の嵐の中を紙一重で鮮やかに潜り抜け。 「……はぁっ!」 かたや、眼前に迫ったナイフを、素早く弾き落とす。 そんな、一進一退の攻防が続くこと、22時間。 熱戦は、いよいよ終末のときを、迎えようとしていた。 「……はぁっ、はぁ……」 「……っく、はぁ……」 両者とも、流石に疲労の色は隠せない。 「もう、少しね……」 「えぇ……さすがにきついですけど」 「カードの残りも少ない……そろそろ、蹴りをつけさせてもらうわよ」 「こっちも、もう、引きません。正面から、当たります!」 「その心意気、それでこそ、紅魔館の門番! ならば、全てを、解き放つわ! 奇術『エターナルミーク』!」 切り札ともいえるスペルを解き放つ咲夜。 その周囲に、狂ったような弾幕がばら撒かれ、美鈴を襲う。 「こちらも、全てを以て、あなたを超えてみせます、咲夜さん! 吹き荒れろ――彩符、『極彩颱風』ッ!! 美鈴も、最後の切り札を、切った。 煌びやかな、しかして嵐と言っていいほどの弾幕が、咲夜へ降り注ぐ。 ――ステージ中央、両者の弾幕が、激しく、火花を、散らした。 ――決勝戦、残り、1時間! ラストスパート!! |